=重なる想い=
誰よりも何よりも輝いていて、俺を惹きつけて離さない。男が男に恋をするだなんてタブーな世界だろうが、それでも俺は、生半可な気持ちじゃなくてただルパンが愛しくてたまらないんだ。共に生きるだけで良い。そう思っていたこともあったが、どんどん膨れ上がる想いは幸せとか喜びまで押しつぶして苦痛すら感じなくなった。
女の元に悠々と遊びに出かける奴の背中を視界に捕らえて、視線も上げることが出来ずに小さなため息をつく。止められない。止める権利もねぇ。本当は俺を置いて出掛けて欲しくないし、何よりも、その指が他の女に触れると思うだけで胸が張り裂けそうだ。
痛い。
痛いんだよ、ルパン。お前への想いは大きすぎて、俺の小さな心臓には収まりきれねぇんだ。落ち着こうと指に挟んだ煙草が、力なく床に落ちて更に気が滅入る。知らないうちに握り締めていた両手は、指先が痺れて役に立たないことに気付いた。あぁ、こうしていつか俺が銃すら握れなくなったら俺はどの道お前の傍にはいられねぇな。
その方が、そうして、お前からイラナイと言われた方がどれ程楽か。必要とされ、傍にいることを許されている今の状況の方が、どれ程辛いか。お前さんにはわからないだろうよ。自嘲するように笑いがこみあげてきて、プツリと何かが切れたように全身がおかしな感覚に包まれる。もう、何もかもどうでも良い、どうにでもしてくれ、そう身体が悲鳴を上げるものだから救いを求めるように無意識に足が動いた。
ルパンの元へは行けない。行くなら……女か。でも女は抱く気にならない。俺が今求めているものを、女は、簡単に手に入れるんだ。あいつの、笑みも、優しい言葉も、暖かいキスも、熱い精も。何でも撃ち抜く自信がある俺でも、世界の半分を占めてる女全員を殺すなんざ無理な話だ。敵はいなくならない。ルパンは、俺のモノにはならない。
女は抱けないと思い至っても、今はどうしても人肌が恋しかった。独りが嫌だった。それならば、と考える理性すら俺には残っていなかった。もう良い。誰でも良い。俺を、壊してくれ。
癒しを求めることすらできない荒んだ心が、ふらふらと身体を連れて町外れへと導いた。その場が世に言うゲイとかバイとか、性を超えた関係を好む奴らが集まる場所だと知っていた。意図せず立ち入った場所は暗くて臭くて、心まで沈んじまいそうになる。値踏みするような視線が身体を這いまわっていることに気付いたが、後は好きにさせた。
寄ってくる気配に、誘うような台詞に、触れてくる指先に。嫌悪感を抱いたのはそいつにか、自分にかはわからねぇ。それでも抵抗はせず受け入れて。首筋に唇が触れる前に、男の吐息が当たってゾワリと背筋に悪寒が走った。
気持ち悪い。気持ち悪い。
ぐっと堪えて唇を噛みしめたことにも相手は気づかず、興奮で血走った目とか荒い息を隠しもせずに俺の身体を這いずり回る。男の手がシャツの中に入って、直接肌に触れただけで吐きそうになった。この温もりは、ルパンのモノじゃない。代わりになんてならない。
「辞めろ」と口にしようとした瞬間に、パンと弾ける音がして目を見開いた。どさりと何かが倒れ込む。その音と共に、俺に触れていた手も離れていった。一瞬で何が起こったか理解する前に、硝煙の臭いと混じって強い鉄の臭いが鼻についた。何度も嗅いだことのある、血の、ニオイ。
肌や服の濡れた感覚にやっと気づいて、あぁ、血を浴びたのかと気づいた。徐々に理解していくのは、男が撃たれて倒れたことやそのおかげで一線を超えずに済んだこと。気持ちの悪い手は、もう俺には触れないこと。
そこまでしか脳が答えを出さないうちに、ふと、一番の疑問が突きつけられた。カツカツと近づく足音。そう、この男を撃ったのは、誰、だ?
「ねぇ、何してんの……? 次元」
鼓膜を揺らすのは、良く知った男の声。でも、恐ろしい程の怒りを孕んだその声色は聞いたことがないものだった。視線を向けると、ワルサーを握りしめて強く強く俺を睨みつけているルパンがそこに居て。怒りを隠しもせずに、応えない俺にギリッと歯を食いしばってもう一度「何やってんのか聞いてんだよ」と低く問いただしてきた。
何で、そんなに怒っているのか。
自分が今までしようとしていた不埒な行為や、女の元へ行ったはずのルパンが目の前にいることや、応えの出ない突きつけられた問いに。ひどく頭が混乱して、ズキズキ痛んで、明滅する視界はゆっくりと近づくルパンに恐怖を見出して。ズル、と足が後ろへ下がったのを自覚する前に、それを見咎めたルパンが静かな怒りを俺にぶつけてくる。
「ひっ……」
「逃げんじゃねぇ」
意図せず逃げようとした行為が、更にルパンの怒りを増幅させたらしく。痛みが走るくらいの強さで、腕を掴み上げられてビクリと身体が戦慄いた。掴まれた腕を解くこともできずに。離してくれ、と口にする前に「答えろ」と低く命令される。先ほどの問いが続いているのだと理解して、早く答えなければと心が焦って。
「 」
なに、を言おうとしてるんだ……ルパンの代わりを探していたなどと、己の想いを告げるような真似を。ルパンに何と思われるかわからない。気持ち悪いと、そんな奴は相棒にしてはおけないと、そんなこと直接言われたら気が狂って生きていけないだろう。開こうとした唇を閉じて、はッと短く詰めた息を吐き出した。言えない。言ってはいけない。
「別に……誰と寝ようが、俺の勝手だろ……?」
男と寝るような特殊な性癖を持っていることを軽蔑されるより、ルパンへの想いを否定される方が俺には恐かった。だから、嘘をついた。ルパンの眼が見れなくて俯いたままそう答えた。これで、良いだろう? そう心で諦めに似た何かを抱いた瞬間、強い衝撃が背中を襲って一瞬呼吸が止まる。
「ぐッ……?!」
「ふざけんな!」
肺が強く圧迫されて、空気が一気に気道から押し出されても入り込む酸素がなくて咽返る。酸素を取り込もうと反射的に大きく開いた口にルパンの唇が強く押しあてられても、壁に阻まれて逃げることができない。ルパンの舌が口の中にまで侵入してきて、縮こまる舌を奪われた。まるで生き物みたいにぬめる舌で揉みしだかれて、今まで感じたことのないような感覚がぞわぞわと背筋を這いまわる。息をすることすら許されずに、何度も何度も角度を変えて弄られて侵される口内はもう全てがルパンに支配されているようだった。うごめく舌が擦れる度に痺れるような快感を与えられて、情けなくとろりと蕩けた口から唾液が流れるのにも気づかない程に。脳までその痺れが伝わる頃、ルパンは俺の唇を甘く噛んで離れた。
「ッ……は……ぁ、はぁルパ……」
「やらしい顔……」
長く酸欠の状態だった俺は、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。どうしてこんなことをするのか、それを俺が問う前にルパンが冷たい視線で言ってきた。
「男好きで尻軽な次元ちゃん、俺様さ、今日女の子に振られちゃって……誰でも良いなら、俺様の相手してよ」
侮蔑するような瞳で、口だけに笑みを作って。頼んでいるような台詞だけど、そこに俺の意思は問われていなくて。絶対的な口調でそう告げられて、俺の心は否を示す。ルパンのことが愛しくて、抱かれても良いからその肌に触れられたいと思っていた。それでも、こんな形で代わりにされるのは嫌で悔しくて、ツラクテ。
ドン、とルパンの胸を両手で押して俺はその地を足で蹴った。
とにかく、ルパンから一度離れたくて前につんのめるようにして必死で駆けだす。整備されてない郊外の道は石ころやゴミが散乱していて走りづらいが、それはルパンだって同じこと。振り返ることも忘れて全力疾走している中で、10m程先に曲がり角が見えた。ルパンの気配は、先ほどと少しも動いていない。なら、そこを曲がれば逃げ切れる。そう安堵の色が心に浮かんだ瞬間。
――パン
数えきれない程聞いたことのある爆ぜる音が鼓膜を打つと同時に、太股が焼けるような痛んだ。痛み、と言うものじゃない。全神経がそこに集中して、脳に痛覚を知らせたいのかズキンズキンと意識が吹き飛ぶ程の強い刺激が送られる。ぶわりと冷汗が全身から吹きだして「ぁッぐ……!!」と悲鳴すら出せずにただ喉が震えた。
足が言うことを聞かずにずしりと重みを増して、引きづられるように身体が地面に倒れ込む。チカチカと明滅する意識の中で撃たれたのだとやっと認識することができて、弾は貫通していたが、とにかく血を止めなければ、と震える手で足を抱え込んだ。はぁはぁはぁと耳障りな自分の息以外何も聞こえない、シン、と静まりかえっているせいで痛みだけにやけに集中してしまう。流れた血の影響で末梢が冷えて、ひどく寒い。不足した血液を補おうと早く脈打つせいで血がどぷどぷと溢れてくる。
「ぁ、ぁ。あ……なん、っで……ッ……!」
横に転がった状態で、薄く瞳を開ければワルサーを構えたルパンが目に入る。光の無い瞳で俺を見据えて、もう一度「ルパン」と名を呼べば「……お前が悪いんだ……」掠れた声が耳に入った。逃げたことへの報復、なのだろう。自分の命令に従わなかった俺を、ルパンはひどく気にくわなかったのだ。
ゆっくりと俺の元に歩きだすルパンが恐ろしくてならなかったが、逃げようもない状況にただ待つしか道はなかった。眼の前に佇むルパンは、俺を無表情に見下ろして「痛い? 」とだけ問いかけてきた。やっと止血された傷は、強く圧迫していたせいで逆に感覚すらなくなってきていた。それでも、その問いかけに答えなければと小さくコクりと頷いて見せる。
「お前が、悪いんだよ……」
痛みを伝えると、くしゃりと一瞬悲痛な表情を見せたルパン。それは色んな想いがない交ぜになっているようで、一体どうしてそんな表情をするのか今の俺にはわからなかった。重く、低く、それは俺に言うんじゃなくてまるで自分に言い聞かせているような色を含んでいた。
「ルパ……」
「許さないから、次元ちゃん」
俺が唇を開こうとすれば、またその色はなりを潜めて無へと変わる。地面に這いつくばる俺の身体に覆いかぶさって、有無を言わさずシャツを引き裂かれた。抵抗をする力すら奪われた俺は、ただ「嫌だ」と繰り返してその怖くてそれでも愛しい名を呼んだ。
ねっとりと絡みつく舌が、首筋から胸へと降りて弱い部分を刺激すれば、冷えた身体がじんわりと熱を持つ。傷口はまだ痛むのに、ルパンが触れる場所がそれ以上の刺激を脳に与えて混乱する。大きいルパンの手が、脇腹を擦って下肢にも伸ばされた。
「あっ……!」
「次元、大きくなってるね、感じてるの……?」
言われてみれば、中心はスラックスを押し上げるように膨らんでいて、それをルパンに指摘されて恥ずかしさで眩暈がした。確かめるように掌で揉みしだかれて、ビクビクと腰が跳ねる。
「ゥッ……や、め……あ、ぁッ、るぱ……!」
「窮屈そう。出してあげる」
「や!」
ベルトのバックルやスラックスのファスナーだなんてルパンには何の障害にもならなくて、するすると慣れた手つきで解かれてその手はすぐに俺自身に触れた。ぐっと握りこまれて、潰されるんじゃないかと一瞬背筋が凍る。でも予想に反して、快感を引きづり出すように竿の部分を強弱つけて擦られて、剥き出しになった先端に爪を立てられた。
「ぁあッは、ゥ、うン……あッぁあぁッ……ルパン、ルパッは、ぁッ!」
「いっぱいいやらしい液が出てきてる。ね、次元ちゃん気持ち?」
「ひぁッ!はぁッ…はっ、うあッ……ぁンん」
与えられる刺激が強すぎて、ずくずくと腰が疼き限界を感じて。辞めてくれ、とルパンに訴えるようにその腕を掴んでも力が入らないせいで意味を成さない。イク、そう思った時には頭が真っ白になって全身を痺れるような快感が貫いた。握りしめられたソレからは、恥ずかしげもなく精が飛び出して、ルパンの手を汚す。
「う……ぁ」
「すごい顔してるよ次元ちゃん、わかってる?」
あざ笑うように言いながら、手についた汚れを舐める雄の顔をしたルパンも、心なしか息が上がっていて。興奮、しているんだとわかる。何に対して? それを考え始める前に、ルパンは射精の余韻で倦怠感に満ちた俺に構うことなく、中途半端に残ったスラックスと下着をはぎ取った。相棒に晒された恥部に恥ずかしさが募るが、片足は未だに力が入らなくて抵抗もろくに出来ない。
ぐっと無遠慮に開かれた足の間に身体を滑り込ませたルパンは、信じられない場所に指を挿れてきた。侵入してくる指に当然抵抗を示すが、いつの間にか塗られたオイルが十分な潤滑を果たして無遠慮に出入りする。ルパンの長い指が入口を拡げながら、ナカまでかき乱すから言いようもない違和感に襲われる。
「くぁ、ッ!?ゥ、うン!ぁ、ああッ!なに、なにしッ……やめ、抜いて……!」
「ダメ。我慢、しな」
「っあ、ぁ!!?」
懇願すら聞いてもらえず、好き勝手に掻きまわされて内部のある一点を指が突き上げれば、射精に似た快感が一気に下腹部を重くする。初めて感じる強すぎる刺激に驚いてルパンを見つめれば、ニヤリと愉しそうに笑うルパンと視線が合った。見つけた、とばかりにソコばかりを集中的に責められて、何度も何度も突き抜ける快感が押し寄せて呼吸すら上手くできずにガタガタと全身が震えだす。
「う!ャ、あ、ぁッはっはっぁ……ン!ぁぐ、ゥ、う!」
「イキな?」
「ヒッ……!?」
イケ、と言われても前は触れられてもいないから達することなどできるはずもない。そんな考えが全て覆されるくらいの衝撃が、身体を打った。溜まりに溜まった快感がどっと溢れて、射精してもいないのに全身がガタガタと細かく痙攣して指の先まで攣ったように筋肉が張り詰める。薄れない刺激が長く脳髄を痺れさせて、感じたこともない絶頂にのけ反った身体がきしんだ。ビクビクと大きく跳ねる俺に、ルパンは愉しげに胸へ再び唇を落として男として役に立たないその突起を噛んだり唇で挟み込んで遊ぶ。
「ゥあ!ぁぁッ……や、やめっあッ!ア!今は……ダメッだめだ、るぱっ……!」
その刺激にすら堪えられなくて、涙ながらに訴えた。治まらない刺激に恐怖すら覚えて、助けを求めるように両手でルパンに縋りつく。長く続いた絶頂がやっと弛緩し始めると、その頃合いを見計らったようにルパンが自分のモノを取りだした。大きく張り詰めたソレは脈打つように怒張していて、呆けた頭でも、恐怖を感じるには十分で。当然ここまできたら何をされるのか理解して、力の入らない身体で這いずるように逃げをうつ。
「……ッ!いや、だ……いやだ、ルパンッ……もっもう……」
「また俺から逃げるの?」
「ぎ、ゃ…アぁぁぁッ!?」
逃げようとする俺にまた強い怒りを見せつけて、ぐっと止血されたばかりの傷を掴み上げられた。燃えるような痛みがそこから走って、悲鳴を上げる。離して欲しくて、「逃げないからッ」と何とか言葉を紡げば納得したようにその手が離れてドッと汗が噴き出した。今のルパンに逆らうことは許されなくて、無言のまま宛がわれる熱を拒むことはできなかった。
「ひぐ、ゥぁ!あぁッあ……ッ!っ!!」
「くっ……」
想像以上の痛みで身体が硬直し、無意識の内に侵入を阻む入口がルパン自身を締めつける。ルパンも一瞬息を詰めるが、俺の弱い部分を愛撫しながら力を抜くように促してきた。
「はぁッ!ぁ、あッ……でき、ねぇ……ッ、つゥ、うあ」
「次元、拒むな……俺を」
「ッえ、な、……?」
「頼むから……ッ!」
ぐっと両脚を掴み上げられて痛いほどに上から押さえつけられた。無理に埋め込まれる熱がゆっくりと侵入を果たして、内臓を押しつぶす。苦しくて吐き出そうとした息も、倒れ込むようにしてそのまま口付けてきたルパンの口内に吸い込まれた。ルパンの吐息も熱くて、この状況に興奮しているのがよくわかった。舌で口の粘膜を擦りあげられて、突き上げる熱も今まで感じたこともない場所を突いては擦って全身がルパンになぶられているような錯覚に陥る。段々早くなる抽挿が、感じる場所を掠める度にまた下腹部に熱が集まった。「うンッ……」と鼻にかかる甘い声が、自分のモノだと信じたくもなくて。
ルパンと一つになっていると言うのに、これがただの性欲処理だと思うと胸が冷えた。込み上げてくるモノは悦びではなくひどい後悔と悲しみ。こんな関係になってしまって、もうこれからはルパンと一緒にいられないだろう。馬鹿な行動を起こさなければ、ルパンに女の代わりを要求されることもなかったのに。
「ぅう……ふ、ふゥ…うっッ……」
込み上げる想いに、今でも愛しいルパンに。ツンと鼻先に小さな痛みが走って、涙が溢れてくる。
好きなのに。好きなのに。好きなのに。
愛のない性交に、それでも感じる浅ましい身体に嫌気がさして。堪え切れなくなった涙が、頬を伝って落ち始めると触れ合っていた唇がハッとしたように離れた。
「次元……なんで、泣いてんの?」
「う、ゥ……泣いて、ねぇ……ッ」
激しかった腰の動きすら止めて、ルパンが俺の顔を覗いてくる。涙の訳なんて言えるはずがない。止めなければと思うのに、決壊したダムみたいにとめどなく溢れ出てくる水はルパンへの想いのようだった。止めたくても、止まらないんだ。
「なんで泣いてるか、言えよ……痛かった?」
「違う……」
「じゃぁ、なんで」
どれだけ身体の傷が痛くても、そんなことじゃ泣かない自信があった。それくらい男の意地があって、でもだからこそそれを知っているルパンは驚いたんだろう。長い付き合いの中で、ほとんど見せたことのない泣き顔に羞恥すら生まれる。
「……ッ、ふ、なんでもない」
「次元」
どうしても答えない俺に、またルパンの声が低くなる。苛立っていることがわかって、またひどいことをされるんじゃないかと危惧して。どうせ、もう一緒にいられないのならばと自棄になる自分が居た。
どうにでもなればいい。
抵抗する気力もなく「好きだから」と呟くように答えた。
「……すき……?」
「ああ、ばかみたいだろ……?俺はお前のことが好きで、どうしようもなくて、代わりに他の奴に慰めを求めた。でも、気持ち悪くて、ダメだった。お前じゃないと、ダメなんだ……でも、それもこれももう今日でしまいだ……」
自嘲気味に笑って、ルパンの顔を見やる。どうせなら、存分に嫌悪してくれれば良い。そう思っていたのに、焦りと驚きに満ちたルパンの顔がどんどん青ざめていくことに気づいた。俺の両脚を抱え込む指先も小刻みに震えて、逆に心配になるくらいうろたえたルパンに疑問を抱く。
「ルパン……どうしたんだ……?」
「……ッ、馬鹿なのは……俺様だよ、次元ちゃん……ッ」
「え?」
くしゃりと表情を歪めて、「ごめん」と繰り返すルパンはさっきまでの恐ろしさが消えていた。ゆっくり俺の脚を降ろして、ずるりと欲を抜き取る。その動きだけで傷の痛みや後ろの違和感に身体を震わせれば、それすら心配するように優しく頬を撫でられた。
「ごめん、ごめんね次元ちゃん、俺、俺は……ッ」
「どうして、謝るんだ……?俺が、悪いんだろう?」
さっきルパンに言われた台詞を思い返して伝えれば「違う」と言って緩く首を振る。
「次元が、逃げようとしたから……いや、そう思ったから……」
「実際、俺はお前さんから逃げた。間違っちゃいねぇだろ?」
「そうじゃなくて!さっきのことじゃない。俺は、ずっと……ずっとお前が大事でお前だけを想ってて。お前は俺だけのモノだと思ってたのに。他の男のトコに行こうとしたことに、腹が立って……ッ!」
ルパンは、そう言いながらギリッと強く奥歯を噛みしめていた。ルパンが“逃げる”ことにひどく敏感になっていたことの理由がやっとわかる。ルパンは、俺が、ルパンの元から去ることを恐れていたんだ。俺も自分の想いを知られてはいけないと思っていたし、ルパンもきっとそう思い詰めていたんだろう。
「なぁ、ルパン……お前さん、俺のことをどう思っているんだ?」
「好き。大好き。触れたらお前は俺の元から去っちまうんじゃないかって恐くてたまらねぇ。だから女を代わりに抱いてたけど、それでも満たされねぇんだよ」
「……本当、なの、か……?」
「ああ。今日だって、お前の傍にいたら襲っちまいそうで、頭を冷やそうと外に出た。そしたら、お前、思い詰めた表情で外に出るから驚いてつけてたんだ……そしたら他の男に触られてて。俺、気が狂っちまいそうで……」
ぽつぽつと語るルパンは、懺悔しているように見えた。お互いが好き合ってたって言うのに、どうしてこんなに遠回りしたのか。信じ切れないこの状況と、それでも喜びに溢れる想いがごちゃごちゃと頭をいっぱいにして言葉も出なかった。
「次元、今でも……俺を好きでいてくれる……か?」
おずおずと問われて、当然、とばかりにネクタイを引き寄せて唇を触れ合せた。言葉よりももっともっと強く想いを込めて押し付ければ、ルパンもそれに応えるように目を閉じた。触れ合うだけのキスでも、今までのキスより何倍も熱くて嬉しくて、また頬を涙が伝う。
「次元、痛い……?」
また泣きだした俺を見て勘違いしたのか、傷を見ながらルパンは申し訳なさそうに聞いてくる。痛みがないわけではないが、「大丈夫」と笑って答えれば身体を強く抱きしめられた。熱い熱いルパンの体温が心地よくて、うっとりと眠気が襲ってくるほどに安堵する。
「ん、ねむ……」
「え?!」
「え?」
驚愕してガバリと身体を離したルパンは、俺の両肩を掴んで激しく揺らし始めた。正直疲弊した身体にはきつい程に。
「うぇ、ッ……る、ルパッ……やめろ!」
「だって、次元ちゃん眠いって……それ、血、流しすぎてやばいんじゃないの?!」
「あー……かも、な……」
実際は最近眠れてなかったし、想いが通じ合って安堵したこととかルパンの温もりが心地よかったからだとは思うが面倒くさくてそう返す。それにまたワナワナと顔を青くさせたルパンが慌てて背中を俺に向けてきたものだから、どうしたのかと首を傾げる。
「乗って!!次元ちゃん、アジト帰って治療しよ!!」
「は?ちょッ……おい!」
ルパンに無理矢理背中へ引っ張られて、背負われる。おんぶとか言うものをこの年でされるなんて恥ずかしいことこの上ないが、広くて大好きな背中と密着する心地よさのせいで抵抗はできなかった。必死に俺を背負って走るルパンの首筋に腕を絡ませて、“もう一生離さない”と誓うように力を込める。その些細な行為に気付いたルパンの耳が仄かに赤くなるのを見て、微笑ましくすら思えた。
「あーもう次元ちゃん可愛すぎ!帰ったら続きね!」
「もう痛いのは嫌だぜ?」
「当然だし……俺様のテクで、とろっとろにとろけさせてあげる」
もう十分、お前の熱でとけちまいそうだけどな。
暖かい背中から、ルパンの鼓動を感じて。密着してるせいでどくどくと脈打つ心臓がひとつになったような錯覚を覚えた。お互いが生きている証拠がここにある。死ぬまで、いや死んでもお前と一緒が良い。
--お前となら、ひとつの心臓でもかまわない--
Fin.
ーーーーーーーーーーーーー
びえええええもうルパ様と次元さんは幸せじゃないと無理です無理ですうううでも両片想いから始まる嫉妬とかだいすきですううううっ////はぁはぁはぁはぁっ/////
実は流血とかダメな方なのですが、鬼畜!とのリクいただいたので、こういう形にしました・・・こ、言葉攻めのほうが良かったですかね・・・・もし無理系だったらすみません><;;
うだうだお互いのル次の気持ち考えるの好きです・・・はぁはぁ・・・だってお互いいい大人・・・そしていい男・・・(関係ない)・・・とにかく、中々素直になれない二人がくっつくまでの慣れ染めが本当に大好きなんですよ////あううう
死ぬまで一緒、どころか死んでも一緒、なル次が良いです////どっちか心臓止まったら、もう一人も止まって良いです////独りにしちゃだめです気が狂っちゃいます////(私が)
悲しい想いはして欲しくないんです!!あいらぶル次!!!お幸せに!!!////.+:。(*´v`*)゚.+:。ポッ♪
読んでくださってありがとうございましたああっ!!そしてリクありがとうございましたあああっ!(*゚д゚*)ノシ
PR