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=ひとときだけでも=
いつも通り夜の街を楽しんでアジトへ戻ると、相棒はソファでぼんやりと座っていた。
「何だ、次元まだ起きてたのか?」
時間は深夜を過ぎて、明朝に近かった。普段から夜行性な俺たちだが、さすがにこの時間まで帰りを待っていることは少ない。
酒でも一人で飲んでいたのだろうか?
そう考えて机に目線を送るが、机の上は酒どころかタバコの吸い殻すらない。
こんな時間まで、何を?
これだけの間思案していても、最初の問いに答えは返ってこない。しかし眠っているわけでもない、目の焦点は合っていないものの開いているのは確かだ。目、開けたまま寝る程器用でもねぇだろ?
「おい、次元・・・・?」
傍まで近寄って、顔を覗き込む。ゆらりと瞳が揺らいで、次いでゆっくりと俺へと視線が移される。
明らかに様子のおかしい次元を、俺も訝しむように見やる。
調子でも悪いのか?
そう考えた瞬間ー
どんっ、
軽い衝撃が身体に走って、温もりが伝わる。ふわりと香る匂いは、次元のもの。
俺は驚きで一瞬息を呑むが、ぽろぽろと相棒の瞳から流れる涙に気付いた時の驚きは、言いようのないものだった。
どんな痛みにも、苦しみにも、次元が涙するなどそうないこと。
「・・・・っ、次元・・・・?!一体、どうしたんだよ?」
抱きつく形になっている次元の顔が見たくて、真意を知りたくて一旦身体を離そうとするが、次元の手が俺の身体を掴んで離さない。
しかし、その手は震えているし、見るからに細いその腕は力を入れてしまえば簡単に離れてしまうだろう。
「ルパン、ごめん・・・・ごめん・・・、今だけ・・・・だから・・・・・、」
絞り出された次元の声は、弱弱しく、呟くような小さなもの。それに、俺に懺悔するかのような響きすらある。
どうして?どうしてお前は泣いている?
どうして、何に、お前は謝るんだ?
「次元・・・、」
宙を泳いでいた自分の手を、次元の身体へと回す。どうしていいのかわからないが、きっと今は、こうするべきだと思った。
そうしてやるとびくりと一瞬震える身体を愛しく感じて、俺はあやすようにゆっくりと背中を摩る。
「・・・・・っ、ルパン・・・・・!」
泣きやむどころか、更にツラそうに涙を流す次元が痛々しくてたまらない。
「次元、次元・・・・ごめん。わかんないんだ・・・何で泣いてんのか、教えて?」
察してやりたいが、クールで誰よりも強いこの男を泣かす理由が、俺には見当がつかなかった。
これじゃ、相棒失格だな・・・・。
怖がらせないよう優しく問うが、次元は答えない。
いや、まるで応えてはいけないと自分に言いきかせるように、唇を噛み締めた。
「言え・・・ない・・・・・っ、」
絞り出した答えは、やはり否定の言葉。
でも、それじゃ俺は納得できないよ、次元。
「ダメ、次元・・・言って?」
怯えたように身体を竦める次元をそっと抱き直して、もう一度問いかける。
先程より強い口調で。でも、優しく。
「・・・・・だ、って・・・・・、」
「うん?」
「・・・・・・」
逃げられないと悟ってか、次元は一瞬思案するような間をおく。
ああ、もう少しだな、そう考えて次元の顎を手ですくう。
「ほら、言いな。」
わざと、命令するように言った。
悪いのは、お前じゃないさ。俺が言わせてんの。だから、悪くない。吐いたら、楽になるだろう?
「あ・・・・っ・・・・・、」
やっと口を開いた次元は、言いづらそうに、「お前が、好きで、ツライ」「ごめん」ってさ。
「・・・・ばか、」
愛しくてたまらないバカで臆病な相棒に、熱い口付けを贈る。
もうお前が苦しまないよう、次元が嫌って言う程愛しちゃうからね。そう告げたら、次元は真っ赤な顔で「ふん。俺が負けるかよ。」だって!
ツンデレな相棒をこれからどう愛してやろうか、考えただけでワクワクしちゃうね。
覚悟しろよ?次元。
Fin.
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感想やらは↓つづきから